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米田知子個展『暗なきところで逢えれば』
2013年9月 6日
そして自由が丘から恵比寿へ、東京都写真美術館にて開催中の米田知子写真展へ。もう少し火曜日の続きを…。
美しい構図の写真だなぁと単純に眺めた後にその写真の背景を知ると全く違った印象を受け、写真までもが別物に見えてくる。彼女の作品の多くは、そのような歴史的事件や災害が起きていた場所を撮影したもの。”記録する”という写真の持つ役割に、”記憶や歴史”といった別のフィルターが重なり、見る側の心を揺さぶります。今回の展覧会では9つのシリーズが展示されており、その中でより惹きつけられたもの2つを詳しく。
~The Parallel Lives of Others(パラレル・ライフ)~スパイの待ち合わせ場所を古いフィルムカメラで撮影した作品。フロアの中に小さく仕切られた黒い壁面の部屋に、おぼろげな中判のモノクローム写真が裸電球に照らされています。どこかあやふやなスパイという存在、秘密裏に行われるやり取りをこそっと眺めているような感覚、ぼやけた写真からはそんなあれこれが感じられました。
~Between Visible and Invisible(見えるこのと見えないもののあいだ)~谷崎潤一郎など文豪の直筆原稿を本人の眼鏡を通して写した作品。これは数年前に原美術館で行われた展覧会で衝撃を受けた作品。レンズの先にある文字がくっきりと写され、彼らの思考に入り込んだかの錯覚に陥ってしまうのです。
現実に見えているものの背景を知った後に受ける衝撃。静謐な写真が一転してぞわぞわと心を動かすのは、作品からの問いに私なりに反応しているから。展覧会レビューではいつも思うのですが、今回は特に言葉だけでは伝えずらくて、もどかしい。。
【東京都写真美術館】 東京都目黒区三田1-13-3 恵比寿ガーデンプレイス内