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【夏旅②】水鏡の庭へ
2015年8月 9日
翌日は兼六園からほど近い鈴木大拙館へと足を運びました。
鈴木大拙氏は、コロンビア大学など海外を中心に東洋の思想を広めた仏教哲学者。
2011年にオープンしたこちらは、建築家・谷口吉生氏によるもの。父親であり建築家の谷口吉郎氏が金沢出身ということもあってのことでしょうか。
アーティストならば「美術品を展示する」と分かりやすいのですが、鈴木大拙氏は哲学者。物体のないものをどうやって伝えてくれるのかしらと、楽しみに進んでいきます。
回廊から眺める玄関の庭。建物は展示空間と学習空間の他は、3つの庭からなっています(写真は展示物以外はOKです)。伺った際は外国からの来館者が学習空間で本を閲覧していました。
そしてこの館の半分以上を占めるのが、この水鏡の庭です。薄く水を張った水盤が、まるで禅寺の方丈庭園のように広がっています。あぁ、この建物は思想そのものを伝える場所なのだと、この空間を見てストンと腑に落ちた気がしました。。
片側は400個ほどの庵治石からできた壁、香川・牟礼の和泉屋石材店が組んだのだそう。精巧に組まれたそのエッジであったり、赤サビのような色味の入った石の組まれ方だったり、私がただ美しいとぼんやりと眺めることができるその裏には、緻密な計算がなされているのですね。。そういえば和泉正敏氏といえばイサム・ノグチ氏の片腕の方。だからこの水盤の水を受け止めるつくばいがイサム・ノグチ氏のものなのか…と、妙に納得したのでした。
数分おきに起こる波紋。鏡のような水面と借景の緑、そして広がる波紋を眺めていると、枯山水式庭園を眺めている時と同じような心持ちに。
水鏡の庭の先にある思索空間。朝早くから開館して静かな時を過ごす「思索のすゝめ」なるイベントも開催されているそう。
この庭のみ入館せずに、外からも眺めることができます。
谷口建築らしさを随所で伺える素晴らしい空間。形のない思想を言語を使うことなく空間で伝える、そんなことができるのは谷口さんしかいないのではと、本当に本当に素晴らしい建築家だなぁと改めて感じたひと時でした。