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【北欧だより+】いまに息づくvintage design:Chandelier "B&G ringkrone"名前の謎を追え!
2020年4月 3日
〜『いまに息づくvintage design〜』では、買い付けで訪れた現地で見かけたヴィンテージ品を紹介していきます〜
当店でも現在5灯タイプを販売しているシャンデリア”B&G ringkrone”の7灯タイプがずらりと並んだここは、伝統あるデンマークの王立図書館。いまだ現役で活躍している姿を見ると長い間大切に使い続けられていることが伺えて、良いデザインのものを受け継いでいく素晴らしい文化が根付いていると感じます。
こちらはさらに天高のあるドーム型の広い空間。リングを大きくしてシェードをたくさん取り付けることで空間に応じたサイズにするなんて、その応用力はもちろんのことデザインの素晴らしさがあるからこそですね。
こんな2階部分までが吹き抜けになった天高のある部分にも、7灯のシャンデリアがしっくりと収まっています。
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そんな中、ふと気になったのは名前の由来の謎…、この照明はデザインが生まれた場所と名前が異なるのです。
こちらはその誕生の場所、1940年にラウリッツェンが設計した旧デンマーク国立放送局。放送局が新社屋へと移転したことを機に、現在は音楽アカデミーとして部分的な改装を経て、いまだ現役として活躍しています。
廊下に吊り下がっているのが、”Radiohus pendel(=放送局の照明)”。彼の代表するこのペンダントは、その名の通り建物と合わせて設計されました。そして同時に"シャンデリアB&G ringkrone”も誕生したのです。
中へ入ると、ロビーでは家具を除いて当時のまま改装せずに使われています。まるで街灯のように床から直接伸びている直付けされたポールの2灯タイプは、現在当店で販売しているシャンデリアと同じドーム型のシェードが使われています。
大理石の壁にレザー製の天井とは、なんとも独創的な空間!ロビーにあるこの2灯ポールの他に、応接室には同シェードを使った天井に合わせてフレームが変形したシャンデリアのビッグサイズ版といった照明もありました。ただ同時にデザインされた"シャンデリア B&G ringkrone"のシャンデリアも同時期にデザインされましたが、市販されることはありませんでした。
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そこで疑問に残ったのが、シャンデリアの名前に付けられたB&Gの文字。。その答えを追っていくと見えてきたのが、デンマークの陶器メーカーBing & Grondahl社。国立放送局完成の数年後に完成したこの店舗内装にて、初めてこのシャンデリアが製品化されたのです。
内部には、放送局でも使われていた”Radiohus pendel”も多用されています。なのですが、こちらを設計したのはラウリッツェン…ではなく、皆さんご存知のフィン・ユール!
その訳はラウリッツェンが国立放送局を設計していた1930年台後半、ちょうどフィン・ユールがラウリッツェン設計事務所に在籍しており、放送局のインテリアデザインを担当したのがその若き日のユールだったのです。その後、彼が独立してすぐの1946年に担当したのがこのBing & Grondahl社の設計で、それに合わせてシャンデリアが製品化されたという訳です。
同じく国立放送局のためにデザインされたRadiohus Pendelもフィン・ユール自邸の書斎でも使われていることから、彼にとって非常に思い入れのある照明だったのかもしれませんね。ひとつの照明を調べていって、予想しなかった場所に着地したのが何とも面白く感じたのでした(解明されることのない新たな謎が残りましたが…)。