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【column/architecture】Arne Jacobsen / Aarhus City Hall
2016年7月15日
デンマーク第2の都市・オーフスの市庁舎は、20世紀を代表するアルネ・ヤコブセンの設計。
1937年にErik Mollerとの共同でコンペを勝ち取りましたが、その設計案を巡って市民と大論争となったのです。
問題となったのはこの時計塔。「権威の象徴」と捉えたヤコブセンは時計塔のない新時代の市庁舎を望んでいたのに対し、シンボルとして時計塔がほしいと主張する市民が反発。行政までは塔を作らなければ費用は払わないと言い出して、最終的に設計をやり直して時計塔のついた市庁舎が1942年に完成となりました。
入り口より広々としたロビー。
ちょうど出会ったデザイン好きなデンマーク人の少年に話を伺うと、館内の照明はエリック・ムラーのデザインだそう。そしてこちらのソファは当時ヤコブセンの事務所に勤務していたハンス・ウェグナーのデザイン。見逃せないもののオンパレードで、見学している私たちは大忙し。
ヤコブセンは自身の建築物の手すりに至るまでの全てをデザインする、有名な完璧主義者。愛煙家だった彼らしく、建物のあちこちに設置された灰皿も面白いデザインでした。
ロビーの片隅に置かれたテーブル&チェア。市民に開かれた市庁舎ということで、経年感たっぷりでいい味わいになっていますね。
右手にはメインホール。壁の反面のガラス窓からは、ホール全体に柔らかな明かりを注いでいます。
この日はあと数時間で結婚式があるとのこと。デンマークでは教会に次いで市庁舎での結婚式も多いそうで、この月だけでも13組の予約が入っていました。
ホール横にある小部屋、こちらは結婚式の親族待合室。ラウリッツェンの照明の下には、白にペイントされたチェアが並びます。
その横は結婚の誓いを立てる部屋。壁面にはAlbert Naurの描く春夏秋の草花が、そしてカーペットはヤコブセンのデザインなのだそう。
このカーペット、現代の部屋にも活躍してくれそうな、素敵なデザインですね。
エレベーターホール。
入り口を正面にしてエントランスホールには、どどーん!と大きな壁画が。Hagedorn Olsen作のオーフスのシンボルや人々の生涯を描いたものですが、ヤコブセンはお気に召さなかったそう。。これ以降、飾るものすべてにヤコブセンのチェックが入るようになったとか。。
1階から地下へとつながる、美しい螺旋階段。ヘリンボーンの床はすべて北欧で採れるもので構成され、修復用の床材のストックも用意されています。
エントランスホールから先へ行くと、オフィス棟となっています。
エリック・ムラーの照明に合わせて、ここにもラウリッツェンのペンダントを発見。
オフィス棟の廊下にも、もちろんウェグナーのソファ。真ん中に市のマークの焼印が押されています。そしてお待ちかねに部屋へと進みます。
ホール棟の上にある議会室、今も現役で使われています。浮遊感のあるペンダント照明が、まず目を引きます。そうそう、敷かれているカーペットはオーフスの地図が描かれているものです。
2階にある傍聴席はマホガニー材のフレームに明るいピッグスキンが張られています。さすがデザイン大国と言われるだけあって、圧感の内装ですね。
市庁舎のあるこの場所一帯はもともと墓地だったそうで、建物横に広がる芝生のエリアには、若者たちが輪になっている平和な光景が広がっていました。コンペ後は一悶着あって設計をやり直した経緯もあるこのオーフス市庁舎は、今ではデンマークで最も成功した公共建築と言われています。この今の風景をヤコブセンが見たら、どんな顔をするのでしょうか。
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