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【ART】ポーラ美術館 / Roni Horn 水の中にあなたを見るとき、あなたの中に水を感じる?
2021年10月26日
昨夜から降り続いていた雨は予報よりも早めに上がり、澄んだ青色の秋晴れの空が広がっていました。先に見える富士山は一気に雪化粧!
ということで朝早くから車を走らせて、久しぶりの遠出です。
向かった先は箱根、オレンジ色のロマンスカーを横目に先へと進みます。
グングンと山の上へと向かい…
箱根・仙石原にあるポーラ美術館に到着しました。
オープン間際の静かなエントランス、澄んだ空気はキリリと気温12度です。
入り口からエスカレーターで下がった2フロアが展示室になっており、地上に出ている部分は周囲の木々よりも低いくらい。ここから見ると、まるで森に溶け込んですっぽりと埋まっているようですね。トップライトからは自然光が降り注いで、エスカレーター下のフロアまで光りが行き届いています。
お目当ては現在開催中の企画展、ロニ・ホーン「水の中にあなたを見るとき、あなたの中に水を感じる?」。アメリカの現代アーティストであるホーンの日本における初個展であり、ポーラ美術館にとっても2002年の開館以来初の現代アーティストの大型企画展とのこと。確かに印象派など近代作家の収蔵が多いイメージですが、この自然を感じる建物には現代アートもよく合いそうです。
《無題》(副題は個々に「魔女は山雨の中で想像していたよりもずっと素敵だ。」など)
部屋に入ると壁一面の大きな窓には森が広がり、自然光が部屋全体をまろやかに包んでいます。その中で7つのガラス彫刻作品がぽつぽつと点在している様子は、部屋の中を気持ちよさそうに浮遊しているよう(企画展の展示室内は撮影可能でした)。
まるで水を張った”つくばい”のように軽やかな印象ですが、実際は重量数百キロもある鋳造ガラス。気の遠くなる時間をかけて、液体から固体へとゆっくり鋳造されて作られています。
見る角度を変えると、底なし沼のように深い深い闇が広がっています。
そして一番窓際に置かれたレモンイエローのものは、とりわけ瑞々しく軽やかなもの。まるで鏡面のように先に広がる森を写し、内へ内へとどこまでも広がっていくかのようです。ほとんど貸切状態の中ゆっくりと作品に対峙しているといつからか自分との対峙に変わり、今の心は平静なのかざわめいているのかと向き合う時間に入っていきました。
今回の展覧会は1980年台の初期作品から現在までを追ったもので、近年の代表作である先のガラス彫刻の他にも、写真やドローイング、映像作品と扱うメディアも多岐に渡っていました。その中で一貫しているのは水というキーワード。唯一の映像作品《水と言う》は、私たちもデンマークでの買い付けの度に訪れるルイジアナ美術館でのパフォーマンスを撮影したものだったので、なんだか親近感が沸きました。そういえばルイジアナ美術館は海に面した場所なので、扱うテーマゆえに自然を感じる美術館との相性がいいのでしょうか。
《円周率》
ホーンが愛してやまないアイスランドを舞台に7年かけて撮影した45点の写真作品。あるご夫婦の日常、北アイスランドの自然、動物など、日常の風景…繰り返される日常や循環がテーマだから円周率なんてタイトルなのでしょうね。部屋をぐるりと一周わざわざ見上げるほどの高い位置に作品をかけているのも、終わることなく無限に続く生命や自然の循環を示しているからかしら。
《あなたは天気 パート2》
最後の部屋には同じ女性の顔のアップを撮影した100枚ものポートレートで、アイスランドの温泉に浸かる女性の顔のアップを6週間撮り続けたものだそう。最初は同じように見えていたものも、目や眉毛、口の微妙な違いから「今日は嬉しそうだな」「何か不安があるのかしら」と心情を想像したり。それはまるでコロコロと変わる天気のようだと、変わり続けるものだと示しているのでしょうね。
2フロアに渡る展覧会を締めくくるのは、森の中での展示(次へ続きます)。