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【ARCHITECTURE】秋野不矩美術館
2022年3月25日
少しづつ日々の暮らしも戻ってきて、およそ3年ぶりに帰省することが出来ました。
その時に少し足を伸ばして浜松市から北へ向かった天竜区二俣ある「秋野不矩美術館」へ行ってきました。
下の駐車場に車を停めてぐるりと回り込むように進みます。先の擁壁が木材でカバーしてあったり、電信柱が木そのものだったりと、アプローチからすでに藤森建築の洗礼を受けます。。
途中で建物の土台部分とご対面。空に向かってそびえる姿は、まるで城壁のようですね。
段々と建物に近づいてきました〜。
と話してお分かりの通り、お目当てはアプローチから私たちを楽しませてくれた藤森照信氏の設計した建物!自然に溶け込んでいますね。
吹き抜けになったロビーはなんと土間、一歩足を踏み入れるだけで他の美術館との違いに驚きます。
漆喰の壁には大きめの藁。
見上げると面白い組み方柱と梁、三角窓からのトップライトで柔らかな光と陰影が付けられています。
靴を脱いで展示室へ(展示室内は撮影不可です)。展示室は2つの部屋からなっていて、まずは籐ゴザが敷かれた縦長の空間、そして奥に大理石の床の真っ白な空間へと繋がっています。秋野不矩は53歳の時に日本画を教えるためにインドへ渡り、その大地の砂で作った絵の具を用いて大作を描いてゆきました。日本画とも西洋絵画ともつかないその絵を初めて見て、その空気までを閉じ込めたような絵の持つ力に圧倒されました。。
そんな自然そのもののような絵だからこそ、藤森氏は大地を感じられるような展示室を作ったのでしょうか。特に大理石の床は原石を挽いただけのもので、ツルツルに研いだあの大理石とはまったく様相が異なるもの。展示室の地べたに座りこみザラザラとしたその感触を確かめながら作品を眺めると、絵の中の乾いた大地に降り立っているような不思議な一体感を得られました。
対になったもう片側の吹き抜けの空間へ。
コンクリートの壁は杉板を貼った型枠で作られているため、お隣の漆喰の壁とも溶け込んでいました。
2階は市民ギャラリーだそう。
ロビーから外に出て小さなテラスへ。
ここの外壁が一番荒々しい!
内部を堪能した後に改めて外観を眺めると、ずいぶん丈夫な土壁だなぁと疑問が。調べてみるとコンクリートを打った後に切り藁を入れた土色のモルタルを塗り、その上から地元の山の土を溶いた泥水をハケで塗っていったのだそう。
耐久性を考えてのこととはいえ、土壁の適さない日本での仕上げは大変なのですね。。
以前藤森建築を見た秋野さんが、自分がインドで描いたスケッチそのものの建物だと驚き、この美術館を建てる際に依頼したのだそう。一人の作家の作品だけを展示する個人美術館だからこそここまで作品と建物とが寄り添っているのかと、紙の作品集では分からない”あたたかさ”は、実際に行って体感したからこそ伝わるように思いました。
さてアプローチからも見えていたこちら、藤森氏といえばの小さな建築「茶室・望矩楼」。山梨の清春芸術村のものと同様に内部は見学不可でしたが、これまた愛らしいツリーハウスでした。