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【ART】ポーラ美術館/モネからリヒターへ

2022年4月28日

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休日の美術館巡りが続いていますが、ゴールデンウィークに入る前にと箱根のポーラ美術館へやってきました。

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朝早くから車を走らせて開館すぐに到着。標高とともに気温が下り…春なのに13度と肌寒い朝となりました。

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この日の目的は開館20周年記念展となる「モネからリヒターへ」。

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静謐な空気が漂う中、エレベーターを降りて行きます。自然との共生を考えた建物の入り口は2階、展示室は地下1&2階へと続きます。

2022042805.JPGまずは従来からの収蔵作品を中心とした展示室1へ(企画展内の撮影は各作品によってOK/NGマークが付いていました)。

img20220508_17325520-1.jpg【今展覧会フライヤー・オモテ面】

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ピエール・オーギュスト・ルノワール《レースの帽子の少女》

「あいさつ」の言葉と合わせて展示されているのは一枚の絵。ポーラ創業家二代目の鈴木常司氏の収集したコレクションを基盤として2002年に開館したポーラ美術館、その開館記念展のメイン・ヴィジュアルがこの絵画だったのだそう。確か私たちが初めて訪れた際も印象派に関する展覧会で、スーラの点描画をまじまじと眺めたことを思い出しました。

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ポール・セザンヌ《ラム酒の瓶のある静物》

膨大な収蔵作品はそれぞれ「水辺の風景」や「静物」などのテーマごと、そして一人の作家に焦点を当てたりしながら、細かな章に区切られた会場構成。この「揺らぐ静物」ではセザンヌから始まってピカソのキュビスムへと進んでいきます。ブラックの横に飾られたベン・ニコルソンの作品はとても好みで、どこかで企画展をやってほしいなぁと他の作品も見てみたくなりました。

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松本竣介《街》

真っ黒な壁面の光を落とした章では松本竣介の作品のみを展示。神奈川近代美術館葉山館などあちこちの常設展で目にしますが、代表作となる時期以外は初めて目にしました。年代によってこんなに作風が異なるのですね。

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難波田龍起《生命体の集合》

また別の章では戦後日本の抽象画をまとめていて、猪熊さんや山口長男、田中敦子と錚々たる面々の大作が一堂に介し見応えたっぷり。

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中西夏之《洗濯バサミは攪拌行動を主張する》

ここ最近東京都現代美術館川村記念美術館で見た彼の絵画とはまた異なる立体作品で、こんな時代もあったのか!と無知ゆえに新しい発見ばかりです。

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そして新収蔵作品を中心に飾る地下2階へと移動して「色彩と抽象」の章へ〜、部屋に一歩入って立ち尽くしてしまいました。。

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ゲルハルト・リヒター《抽象絵画649-2》 クロード・モネ《睡蓮の池》

今回の展覧会タイトルとなっている「モネからリヒターへ」が並んで飾られているではないですか!タイトルを初めて聞いた時は新旧の収蔵作品を代表する2点だからという理由かと思ったのですが、主要なテーマは”光”であり両者は異なるアプローチで光を追い求めていたことでこのタイトルとなったのですね。いやはや納得です。

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特にリヒターは6月から始まる大規模個展を楽しみにしているので、一足早く作品を眺めることができて感謝。。

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モーリス・ルイス《ベス・ザイン》

その横には同じく川村記念美術館で見たばかりのルイスの作品が並びます。展覧会によってまた異なる見せ方をされることに、それぞれのキュレーターさんの凄さを改めて感じるのでした。

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カラー・フィールド・ペインティングのステイニング技法だ!と先週の復習。。

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この章「ハマスホイとリヒター 絵画と窓、そして光」では真っ暗な部屋に2作品のみ、デンマークの近代美術を代表するハマスホイが飾られているなんて知らなかったので、一番驚いた部屋となりました。

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ヴィルヘルム・ハマスホイ《陽光の中で読書する女性、ストランゲーゼ30番地》

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窓から差し込む光を際立たせるグレイッシュな作品、確かにこちらも今回の展覧会のテーマである”光”をモチーフにしていますね。

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ゲルハルト・リヒター《グレイ・ハウス》

隣の壁面に並ぶのは先ほどモネの横に掛けられた抽象画とは一転、モノクロ写真をもとにぼかしやブレを加えて描かれたフォト・ペインティングの作品。

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グレイと窓、そしてシャイン=光がキーワードとなった作品と、確かにこの2作品に共通点が多いのですが…言われるまでまったく気がつきませんでした。この部屋も分かれ難くて長い間遠く離れて、近くに寄ってと、ぼんやりじっくりと鑑賞。

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そして最後に「杉本博司 光の色彩」へと続きます。新シリーズは   “プリズムによる分光装置を透過した光を鏡の反射によって薄暗い観測室へと導き、そうして壁に投影された分光をポラロイドカメラで撮影する。そのフィルムをスキャンしたのち、色調を微調整しながら拡大して印画紙に焼き付ける(本展覧会の図録より引用)“   のだそう。

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杉本博司《Optocks179》

新たな手法が難しすぎて理解するのに時間がかかりそうですが、杉本さん自身の解説では ”光を絵の具として使った新しいペインティング” と簡潔にわかりやすく説明してくれていました。そう言われて作品を見るとカメラから光に道具を変えた新たなシースケープだ!と新鮮な気持ちで眺めたのでした。

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元々一人の目で収集されたコレクションを核としてそこに現代の作品を新たに加えていくという、美術館の成り立ちから今後への思いがしっかりと伝わった展覧会でした。確かに最初に訪れた時は印象派に強い素敵な美術館だなぁと感じていましたが、現代アートをプラスしたことで今までの収蔵品もさらに輝きを増して、この場所でしか見ることのできない企画展をしてくれる唯一無二な美術館に生まれ変わっているように思います。

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美術館の周りに広がるこの「森の散策道」はちょうど10年前の10周年記念で整備されたもの。新たな屋外作品も少しづつ増えていて、こちらもますます魅力的になっています。

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美術館を出る頃には雲も取れてすっかり青空になっていました。日帰りで訪れることができるのにちょっとした旅気分を味わえる程よい距離で、これからもどんな企画展をしてくれるのか楽しみです。

【ポーラ美術館】神奈川県足柄下郡箱根町仙石原小塚山1285

カテゴリー:ART&CULTURE

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