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【北欧だより/ ART】Kunsten / Stine Goya・Hvis du kan se det jeg ser
2025年2月15日
1972年完成のアアルト晩年の作品は建物に合わせてデザインされた照明を含めて、白い大理石と真鍮のゴールドを基調とした静謐なロビーです。
現在4つの企画展が催されている中で一番メインとなっているのが「Hvis du kan se det jeg ser(私が見ているものを あなたが見るのなら)」展。
この展覧会は国際的に活躍するデンマークのファッションデザイナー Stine Goyaが、この美術館の4,000点ほどの収蔵作品から『別離』をテーマとしてキュレーションしたもの。壁面はペールピンクのグラデーション、大理石の床には一部ペールグレーのカーペットを敷き、透過性のあるファブリックをパーティションにするなど、いわゆる専門的なキュレーターが行う空間作りとはまったく異なる雰囲気の空間が広がっていました。
Morten Sondergaard 《Unknow Thyself》
デンマークの現代アーティストの大理石を用いた作品で、古代バビロニア文明にインスパイアされて「もし…」で始まる碑文がそれぞれに書かれていました。その内のひとつ「If You See What I See(私が見ているものをあなたが見ているなら)」が展覧会のタイトルにもなっています。それにしてもアアルト建築の特徴的なトップライトから降り注ぐ自然光をみごとに生かした展示ですね。
「別離」がテーマとなっているのですが単調な偏った作品が並んでいるのではなく、そこから生、死、夢、憧れ、孤独、希望とさまざまに派生して、時代もジャンルも多様な作品が並んでいるのが面白く感じます。
近代〜現代の作品を中心とした作品群は、その並べ方ひとつにGoyaさんの感性を感じるものでした。
Sophia Kalkau《Blow an Egg》
特に気に入ったのはデンマークの現代アーティストSophia Kalkauのこちら。天井から垂れ下がる雫と砂の輪の中に佇む白い卵、作品の解説を頭に入れながらもただ美しさに魅入っていました。
Yarema Malashchuk & Roman Khimei《YOU SHOULDN'T HAVE TO SEE THIS》
そしてこちら、写真作品かと思いきや5つの箱の画像は順に動き出す映像作品で、ロシアに強制送還されたウクライナの子どもたちがウクライナに戻ってくる様子を映し出したもの。ヴィジュアル・アートと映画の間のような作品を作るキーウ在住の2人組で、戦争犯罪や戦争中の子供達に焦点を当てた作品を作っているのだそう。日本で紹介されていない様々なアーティストに触れることができるのは貴重な経験だと感じます。
冬休み週間に入っていたので、夕方といえどもまだまだ多くの人で賑わっていました。
最後の部屋はバックヤードと称して、ファッションデザイナーとしての彼女や、空間で使用する色の選定などを紹介していました。映像は収蔵庫から作品を選ぶ様子、アアルト設計の空間にどのように展示していくかのドキュメンタリーで、こうして生まれたのかとワクワクするものでした。
彼女の頭の中をのぞいたような、可愛らしいが散りばめられたブースの中。ひとりのアーティストの回顧展やグループ展とはまた異なる、とても素敵な企画展でした!